薬指の標本
主演 オリガ・キュリレンコ マルク・マルベ
小川洋子が原作の小説 原作では舞台が日本ですが映画はフランスで製作され少しづつ小説と違うところはありますがいいかんじに物語の怪しさ美しさが演出できています
イリスはソーダ水の工場で働いている
ひと昔前の工場設備のベルトコンベアー 流れ作業で中身が注入されたソーダのビンを手に取り移す作業をするイリス 工場の中はうだるような暑さ
コンベアーの途中で瓶の先端が割れますが最新ではないので異常を感知し自動的にとまる設備はない でどんどんそのまま割れた瓶は流れていきそして必然的にその瓶をつかんでしまうイリス 痛みに叫び気絶し医務室で目覚めるイリス
(この薬指、画面では明確になくなっているようには写りません、切断というまでではなかった様子,先端の皮膚が大きく切られた感じ)
薬指の先端を失ったイリスはソーダ工場を辞め、あてもなく港町に流れ着きます
泊まる所を探すがなかなかみつからずやっと見つけたと思っても満室
かわいそうに思ったホテルオーナーは提案します
船の仕事で夜勤をしている男の部屋がある、夜は仕事でいなくなり昼間は帰ってきて寝る
イリスが昼間だけ部屋をあけてくれれば二人で交代で同じ部屋を使っていいとのこと
承諾するイリス 疲れきって部屋に入って寝ます
(仕事に休みはあるだろうしまったく接触しないで同じ部屋を借り続けるのは無理では
日本じゃありえない話ですが外国だとよくあることなのでしょうか…)
次の日、仕事を探しに街にでるイリス水上バスのようなのに乗りたどりついた先は
ミステリアスな雰囲気ただよう木々の中の建物
ドアには標本技術師の助手の募集の張り紙が
呼び鈴を鳴らすと中から白衣を着た技術師が
(このあやしい技術師、小説では弟子丸氏という名前がでてきますが映画版では名前はなく標本技術師とだけ)
面接を行いイリスをソーダ工場よりももっといい給料で雇ってくれるということ
この建物は以前は学校の女子寮で今でも学生だった2人の老女がそのまま住み続けているらしい
仕事内容は標本にしたいものを持ってくる客へのお茶だしなどの対応、書類作りなど
ずっと保管されるので依頼者はいつ見にきてもいいのだが訪れる人はほとんど
いないのだとか
技術師はイリスに試験管の中に漂うキノコをみせる
「これは家が火事にあって家族が死に、一人だけ生き残った少女が焼け跡にはえたキノコをもってきた」と
標本技術師の助手としてエアコンの効かない部屋の中イリスは客をもてなしお茶をだす
タイプライターで書類を作成し業務をこなす
客に出したチョコが溶けるほど暑い室内
技術師はエアコンの修理業者を呼ぶといいますがいっこうに修理にこない
ある日技術師はイリスを地下に案内します
この建物には女子寮時代のまま残されている大浴場がある
イリスが履いている靴を見て「その靴は子供っぽすぎる」という
技術師は赤の素敵なデザインの靴を持ち出しイリスに履かせます
靴はあつらえたようにイリスの足に吸い付くようぴったり!
標本技術師なのでサイズがわかるとのこと(ほんとかい?)
「仕事のときも休みのときもずっとその靴を履いていてほしい」という技術師
ある嵐の日、雨にぬれて出勤したイリス
例の浴室にてその体を技術師が拭いて上げる そのまま体の関係を結ぶ二人
その後も浴場で逢瀬を重ねますが何度体を重ねても
いつもキスはしそうでしない
この二人おたがいに愛はあるのかないのか 裸でも例の靴だけは履いているイリス
肌を重ねながら標本技術師は「悲しかったり辛い思い出はないか」とイリスに聞く
「ないわ」 「いや誰にだってあるはずだ
かなしいつらい出来事があるはずだ思い出すんだ」
イリスは思い出します 「薬指の先端をうしなったわ…」
昼夜逆転でホテルで同居している男からイリスにラブレターがあり
仕事が休みの日にこの店で会いたいと書いてある
イリスもまんざらではない様子 通勤に使う船から造船場で仕事をしている男を見て
微笑んだりして 約束の日イリスは待ち合わせのバーにいきますが店の窓越しに商売女と遊びでキスをする男をタイミング悪くみてしまい踵を返すイリス
気づいた青年はホテルの下までイリスにあやまりにきますが彼の姿を見ても気分は変わらずホテルの窓をしめるイリス
「バカだ俺は…」と悔やむ青年 その後、造船場の仕事も終わった青年はホテルを去ります
(ここでこの青年といい感じになっていればイリスの今後は違ったかもしれません…)
靴磨きのおじさんがペットにしていた小鳥の骨を標本にしたいとやってくる
イリスを見ていい靴をはいているね、今度靴を磨きにきてくれといい去ります
ある日、中年の女性が昔の恋人から送られた曲を標本にしたいと譜面をもってきます。
標本技術師とイリスは音楽を標本にするため寮に済み続けるピアノをひける老女にお願いしにいきます
いつも編み物をする老女も誘って皆で老女の部屋で楽曲を聴きます
ピアノを聞きながら、ふとそばにある写真立てを手にするイリス。そこには女子寮時代の集合写真、そしてその中には先生のようにたたずむ標本技術師の姿が…
同じ写真に写る女子寮の少女たちは老人になったのに技術師だけが年をとらない…なんだかおかしい、非現実的です
不思議がるイリスに技術師は何も言わず不敵に微笑むだけ
老女たちは何か知っている感じですが何も言いません
今日は標本の整理をお願いできないかと標本技術師に言われイリスは過去の大量の標本の
片付けをします。そこで編み物好きの老女に声をかけられます
お茶でもどうという住人の老女 お部屋におじゃますることに
ふとイリスにその靴だけど…と話し出す老女「あなたの前任の助手も同じ靴をはいていたわ」
「そしてある日突然こなくなるの
前のその前の助手も同じ靴をはいていたわ…そしていつもいきなりいなくなる」と怖い話をする
部屋を去ろうとするイリスに「あなたはいなくならないでね」と忠告する老女
火事で生き残った少女がラボに訪れる「火事にあった時にできた顔の火傷を標本にしてほしい」という 技術師を呼ぶイリス そのまま技術師は少女をどこかにつれていってしまった
イリスの退勤時間の5時になっても少女はもどってこず少女の傘だけがそのまま残されていた
次の日出勤するが傘は昨日のままの位置に…
少女はあのまま帰らなかったのだ…技術師につれていかれたままこの建物の標本を作る部屋に今も?そこに技術師が平然と傘を回収しにきた
イリスは嫉妬する 少女は標本を作る部屋につれていかれた
自分でもまだ許されていないあの部屋に
悶々としながら標本の片付けをしていると引き出しの中、そこには写真の標本が…
よく見ると若い女性でイリスとまったく同じ靴を履いているではありませんか
写真の画像は外気に触れたことですぐにたち消えてしまったが
(これは前任の助手の写真…?なぜ標本になっていたのか)
そこに中国人がお客として現れ麻雀パイを標本にしにおいていきました
イリスは心の動揺からか持った麻雀パイをすべて床にぶっちらかしてしまいます
それを見た技術師は怒ったように「全部元通りにするんだ」とだけ告げ立ち去る
一晩中パイをよせあつめるイリス 完成したころは朝になっていました
終わったころにあらわれる技術師 イリスの体を抱き支えます
「私もあの部屋につれていって」と懇願するイリス
「僕だけの部屋だ」と断る技術師 そしてイリスの薬指を優しくいたわるのでした
休日、以前のお客で小鳥を標本にした、靴磨きのおじさんに靴を磨いてもらいにきたイリス
なれた手つきで靴をきれいに磨くおじさん
そして長年の経験からイリスに忠告します
「いい靴だ…しかしその靴は履いている人を贈った人が縛る靴だよ
愛する人からのおくりものかい それならいいのだけど…」
「愛している…?どうなのかしら…ただその人からは逃れることができないの」
イリスを心配する靴磨き
「その靴を標本にするってのはどうだ?
その靴をぬぎなさい、そうすれば君は自由だ」
イリスはふと考え「自由になりたくないの」と告げる
「そうか、もうあえないな」と笑顔でいう靴磨き
決心したように道を歩いていくイリス
仕事終わり
自分の机で標本につけるタグを作っているイリス
できあがったそこには ” イリス 薬指 ” と書いてある
タグを持ち標本技術師の仕事部屋まで降りていくイリス
手前で靴を脱ぎ裸足になる
扉を開け まばゆい光の中少しづつ歩いていく…
標本技術師の正体は最後までわからず 以前は女子学生の教師だったのか
なぜ年をとらないのか 前の助手たちは本当に標本になっているのか
ほとんど解明されないままラストになります
謎は謎のままがまたいい
イリスは自分の意志で現実世界にもどってこない選択をしたんですね
大多数の人は自由を求めて色々ことを起こすのにイリスは自由になりたくない
途中、助手の仕事が決まったイリスが夜の街を歩くシーン
売春街に入っていき店には外に向かって窓があり、そこから一人ひとり官能的な衣装を着た風俗嬢たちが体をくねらせて客をさそっています
その窓の1つに一人の女が疲れた表情で腰を振っている 立ち止まるイリス
女を見つめるイリス それに気づき陰鬱な表情で見つめ返す女
風俗店の窓の中と外の違う人生の女 しかし何か感じあうものがあり…
これは小川洋子の原作にはなく映画だけの描写
映像や表情だけで感じとれる不穏な空気
なかなかこないエアコン業者、イリスの汗だくの肌に張りつく衣服
暑さで溶けたチョコレート 実在していたのか不確かな少年
そして全編に流れるベスギボンズの音楽
不思議がこの映画の各所に配置されていて
未知のいい雰囲気がでています
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